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ホスト 歌舞伎町 貸切 小説 無料 トラギリ モルディブ 2/2

投稿日:16/07/2018 更新日:

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ブルー…BLUE…(トラギリ)1/2

ブルー…BLUE…(トラギリ)2/2

ディナーの後部屋に戻ると、ベットがシーツの波で絵のようにデコレーションされて、枕元に花が一輪置かれていた。

焦った。

どんな風にエスコートして、ジュンをベットに連れていけばいいのかなんて。

ロマンティックな舞台は完璧。

あとはそれにふさわしいセリフ。

だけど色々と言葉を思い巡らせては、その貧弱な知識に舌打する。

そうだ俺、バラードって歌った事ない。

陳腐で軟派でやってらんねぇよ。なんて。

だけど今、俺が探しているものは、そんな甘くて切なささえ添えた言葉。

ホスト時代に使い古したセリフはどれもジュンには似合わない気がした。

「いいのよ、レン」

そんな俺を見透かすように彼女は言った。

「あたし、愛がないとセックスしない主義だから」

どうしてだろう?

愛してないと言われた気がして胸の奥がチクリと痛む。

愛だって?何考えてんだ俺。

仕事が一つ減った。

楽でいいじゃんか。

そう思えばいいんだよ。

「腕だけ貸して?」

ジュンは悪戯っぽく微笑むと、えいっとベットに飛び込んだ。

俺の腕を枕にして、ジュンは猫みたいに丸まって眠る。

一日過ごして、やっとモルディブを俺なりに理解してきた。

トラギリみたいな島が沢山あって一つの国になっているらしい。

珊瑚の欠片で出来たインド洋の楽園、。

ジュンに連れてこられなければ一生来ることもなかっただろう。

だけど知ってしまった。

極上の安息という究極の贅沢を。

知らなかった頃の俺がすでに別人に感じるくらいだ。

こんな感覚は初めてだった。

自分のちっぽけさがオカシイくらいだ。

ジュンに感謝していた。

彼女が俺の道しるべみたいに思えた。

出会えた事を安堵しながらも、1週間後、この旅が終わったらと思うと、どうしようもない焦燥感が襲ってくる。

ジュンが口にした沢山のブルー。

あの響きが忘れられない。

今、腕の中の華奢な女。

だけど自分が抱かれている錯覚さえする。

そしてその温もりに触れてしまって…知らなかった昨日の自分が、やはり他人のように感じていた。

だけど、こんな温もりは知らなかったほうが俺は幸せだったんじゃないか?

金で雇われた俺

求める事など許されない関係なのだから。

次の日も次の日も、だたひたすら、シュノーケルをして、疲れればビーチで寝転んでのんびりと過ごしていた。

パームツリーの木陰で寄り添いながら、俺はジュンに話し掛けた。

「ジュンのあのザック…年季はいってるね」

「モルディブには必要なかったみたい。つい癖でね」

「癖?」

「あたし放浪癖があるのよ」

ジュンはそう言って青く澄み渡る空をあおいだ。その脳裏によぎった風景がこの空の先に続くのを確かめるみたいに。

「どこを放浪するの?」

「いろんな国…ひとりきりの安上がりなバックパックの旅よ」

「ひとり?」

「女なのにって?」

「…やるね」

彼女は照れたみたいにはにかんだ。

「俺、ありきたりの海外旅行しかした事ないや。なんか旅の話聞かせてよ」

ジュンは語り出した。

砂漠に咲く花の話

モンゴルの素朴な笑顔の小学生の話。

そして、異国の地を一人きり、自分の足で巡る高揚感を。

「歩き回るの好きなのよ。でもこんなどこにも行きようのない小さな南の島でのんびりするのも素敵ね。初めてよこんな旅」

どうして?

その言葉を飲み込んだ。

いつも一人旅なのに。

ホストを貸切りにして…俺に金まで出して…

それも信じられない値段を。

バックパッカーの彼女らしくない、奇妙とも言えるこの旅。

特別な理由がある気がした。

だけど尋ねることをしなかった。

縁があってジュンは俺を選んだんだ。

クラブの入り口に並べられたホストの写真の中から俺を見つけ出してくれた。

救い出すかのように…

あぁ、歌いたい。

こんな事を望んだのはいつぶりだ?

海に風に、この島々に教えてもらった自由と孤独を。

フレーズがひとつだけ、こみあげてくる。

ブルー…BLUE…

この響きを織り込もう。

ジュンからこぼれたあの色彩があふれるような歌にしよう。

ポロポロとこぼれるみたいに頭の中に音符がひろがる。

書き留めなきゃ。

昼寝でもしたら忘れちまいそうだ。

確か引き出しにボールペンが…

「あたし、ちょっとシャワー浴びてくるね」

ジュンはそう言うとバスルームの扉を閉めた。

あれ?インク切れてるじゃん。

ふと一度も足を踏み入れていない小さな売店を思い出した。

散歩がてらに買いに行くか。俺は外に出て行った。

買い物なんて当たり前の事をこの島に来てからしていなかった。

必要なものなどなかったのだ。

店の中はパレオや土産品、クッキーに絵葉書なんかが、たいして売る気もなさそうに並んでいた。

「ペンある?」

と店員に聞くと、しばらくゴソゴソと探していたが、面倒臭くなったらしく、手に持っていたボールペンをプレゼントだと言って渡してきた。

だから何か他に買い物していけと言う。

何か?何にも買うものなんて…

と見回すと、隅に置かれた麦藁帽子が目に入った。

ツバのすそがバラバラと切りっぱなしになっていて、南の島らしい麦藁帽子。

帰り道、レストランで顔なじみになったイタリア人が「チャオ」とビーチに寝転びながら声を掛けてきた。

「チャオ」と挨拶を返す。

1周歩いて10分ほどのトラギリ。

何がどこにあるのか俺の頭の中に島の地図がすっかりインプットされていた。しかもこの島のインコの名前までスタッフに教えてもらって…

まだ数日の滞在だというのに、俺はすっかりこのリゾートの住人になりきっていた。

ヤシの木陰に座っているジュンの背後に忍び寄る。

石鹸の香りがした。洗いざらしの髪は濡れたままだ。

その頭に、ポンと俺は今買ったあの麦藁帽子を乗せた。

「…っビックリした。ヤシの実が落ちてきたのかと…?」

頭から帽子を取って、驚いたみたいにそれを眺める。

「あたしに?」

そしてもうひとつ…俺は後ろ手に隠し持っていた物をバサリと広げてジュンの頭からかぶせた。

ビクリと体を跳ね上げたものの、ジュンはされるがままに大人しくしている。

彼女をラッピングした物。

ブルーのパレオ…。

「綺麗…」

光を透かして眺めるジュンにはこのブルーのパレオの海に浮かぶ花模様がもっと鮮やかに見えているかもしれない。

その時ジュンの手に広げられていたもの。それは小さめのスケッチブックだった。

「絵を描くの?」

「うん、ここでラフにデッサンして、帰ってから銅版におこすの」

「…それってジュンの仕事?」

まあね。と曖昧にジュンは笑った。

そこには鉛筆で描き始められた海があった。

色が付いていないのに、黒一色の濃淡の中に強烈な南の日差しを映す海面が描かれていた。

どうしてこの女はいつも俺の心の奥底を、爪先で弾くような事をこうもたやすく出来るんだ?

しかも無意識に。

俺達は並んでそれぞれのやりたい事を続けた。

ジュンはデッサンを

俺は歌作りを

「レンの本業は作曲?」

「…バンドのボーカル」

「あたし音痴だから尊敬する。ね、なんか歌ってよ」

なんとなく思い浮かぶ曲をBGMみたいに歌い始めた。

古い歌ばかり。ジャンルもごちゃ混ぜ。

クラプトンやビートルズやボブマリー…レニークラビッツ

だけどゆったりしたバラードばかり。

時々筆を休めて、ジュンは俺の肩に寄り添って俺の歌に耳を傾ける。

酔い知れているなんて言葉は自惚れだろうか?

ほら、まただ。

彼女の伏せられた睫毛の落とす影に俺の視線は釘付けになる。

そんな彼女に聞かせる歌は切ない溜め息みたいな曲ばかり。

そしてそんな気分をペン先に載せて、俺は歌を作り続けた。

何度目の夜だろう?

もう、腕に感じるジュンの髪の感触も慣れたものになってしまった。

でもその日は、必ず目を覚ますと隣にいたジュンの姿が見当たらない。

まだ、夜も明けていない真夜中だ。

タバコでも吸いにテラスに居るに違いない。

ドアが開けっ放しになっていた。

驚かせようと俺は忍び足でテラスに近づいた。

やっぱりね

月明かりに照らし出されたジュンの後姿。

タバコの灯りが暗がりに浮かぶ。

「俺にも1本頂戴」

そのセリフに弾かれたようにジュンは振り向いた。

だってさ...まさか...

思ってもいなかった。彼女が泣いているなんて…こんなに静かに…

「どうしたの?なんかあった?」

呆然とそんなセリフしか出てこなかった。

「やだ、気にしないで…レンには関係ないのよ」

関係ないという言葉が淋しかった。

隣の椅子に腰掛けて、テーブルの上のマルボロの箱からタバコを取り出して黙って火をつけた。

タバコの箱の脇に、トラギリのポストカードが置かれている。

売店でジュンが買ってきたのだろうか?

「一人旅ばかりしてきたけど、帰りを待っていてくれる人がいるから旅に出れたんだなって」

ジュンは独り言みたいにそう言って、短くなったタバコを灰皿に押し付けた。

「あたし、両親ももう亡くしているし、彼だけだったんだけど、6年も付き合って…もう疲れたって言われたわ」

淋しそうにジュンは笑っていた。涙はもう乾いていたけれど。

「あたしの生き方を、すごく理解してくれている人だった。でも…ね…やっぱり結婚を意識しだすと違うんだろうね
結婚したら、一人で旅に行くのなんて止めると思っていたみたい。
でも、止める理由って何?ちゃんと帰ってくるのに。あたし、空っぽになっちゃいそうで怖い…絵も描けなくなりそうで…」

俺は黙って聞いていた。彼女が全てを吐き出せたら、少し楽になれる気がしたから。

「来年結婚するつもりで一緒に暮らしていたんだけど…出て行ったの」

ジュンは指先でタバコを摘み上げた。

だから、俺は慣れた手つきで彼女に小さな火を贈る。

「二人で1度だけフランスに行った事があって、その時彼がプレゼントしてくれた絵があってね…小さな画廊で売っていた若い版画家の絵だったんだけど…別れた後、家に飾ってあるのが息苦しくて…彼に返すって言ったら、いらないなら売ってくれればいいからって…そしたら、その版画家随分有名になっていて…しかも事故で亡くなったばかりで…ビックリするような値段になっていたのよ。いいやって思ったわ。思いっきり気晴らしに今までしたことないようなことやって使っちゃえって…」

それがあの200万って訳か。

「昼間ね、なんとなく売店に入ってみて、癖で絵葉書なんて買っちゃったの…馬鹿みたいね。送る相手、もういないって店を出てから気付いたのよ」

ゆっくりと手を伸ばしてジュンを抱きしめてみる。もう泣いていなかったのに、それを堪えているかのように彼女の肩は小刻みに震えていた。

「…ね、それ、俺に送ってくれない?」

「え?」

「俺が受け取るよ、この旅のジュンの思い出」

「…ありがと」

ふわりと彼女の手が俺の頬をを引き寄せて、乾いた唇がそっと重なった。

この島に来てから何度もジュンとキスを交わしたけれど、彼女が落としたキスはコレが最初で最後だった。

 

あれは夢?

東京の雑踏の中、俺は見上げるくすんだ空に、あのブルーを探す。

ジュンの事が忘れられない。

彼女の口からこぼれた沢山のブルー。

帰国して10日間、眠る事すら忘れたように俺は歌を書き上げた。

バンドの皆はビックリしてたけど、一気に3曲も作ったから。

でも皆が口を合わせたように「お前らしくないけどスゲエいいよ」って誉めてくれた。

…誉めてんだよな?

言葉が溢れた。喉元でつかえていたわだかまりが、一気にどこかに流れてしまったみたいに。

今まで思いもつかなかった単語が、綺麗な響きを添えてこぼれ出した。

そして、この日常に当たり前みたいに埋もれていく俺。

だけどあの日々は現実だったんだと、そう証明するジュンからのポストカードがある日ポストに届いた。

最後、リゾートを出発する前、レセプションからジュンが出したポストカード。

モルディブの郵便事情ってあの島らしくホントのんびりなんだな。

1ヶ月もかかるか?いや…あの小さな南の島から、俺の部屋にちゃんと届いたのが奇跡のようなものだ。

とんがり屋根のトラギリのビーチコテージが白い砂浜とヤシの木に溶け込んでいる。

そんな絵葉書。

ここに居たなんて…嘘みたいだ。

丸っこいジュンの文字。

ドキドキした。届くまで内緒だと中身は見せてもらっていなかった。

レンへ

隣にあなたが居るのに、何日か後のあなたに手紙を書いているのが妙な気分。

変な女の気紛れな旅に付き合ってくれて…沢山の優しい時間をありがとう。

麦藁帽子とパレオ宝物にするね。

いつかこの海で、あなたが書いていた歌を聞いてみたいです。

運が回ってきたのだろうか?

ちょうど夏だっていうのも良かったんだろうな。

口紅のコマーシャルのバックに流れる自分の歌声を、不思議な気持ちで聴いていた。

モルディブによく似た蒼い青い海が口紅を引くモデルの背景に広がる。

ブルー…BLUE…

この海に重なるように俺の歌声がTVから響く。

他人事のようだった。だけど、それは現実。

違う。トラギリの空はもっと沢山のブルーのグラデーションだった。

脳裏に浮かんだ風景に、懐かしくて胸が詰まる。

あれから半年が過ぎようとしていた。

あの空と海がどうしようもなく俺を誘う。

ジュンの面影も…。

半年前登れなかった階段を、俺は確かに駆け上がったんだ

だけど、ポッカリ隙間があった。

歌う事に満たされてはいたが…。

時々、ジュンから絵葉書が届いた。

日記みたいなメッセージ。

世界の果ての、聞いたことのないような街から。

 

多分、多分今日だ。

ロサンゼルス経由でペルーのリマからの帰国便は週1便しかない。

7月の終わりに帰る予定だって前にきた葉書に書いてあった。

成田の到着ロビーで待っていたら、ジュンに会えるかもしれない。

いっぱしの芸能人みたいに、キャップを深々と被って俺は車で成田に向かった。

顔も少し知られてきて、馬鹿みたいに自由が利かない。

だけど、今日はスケジュールを開けておいたんだ。

もう限界だった。

ジュンに会いたい。そしてあの海で作ったこの曲を、彼女に聞かせなくては…。

そして、誘うんだ。また、あの海に行こうよって。

今度は俺の奢りでさって。

ごったがえす到着ロビー。遠くから人ごみに混じって小さな影が見えた。

ほらね、あいつまたあのザック背負ってる。

俺の誘いを受けてくれるだろうか?

だって今度はホストじゃなくて…一緒にいたいのだと言ったらどんな顔をするのだろう?

頭からキャップを取って俺は大きく手を振った。

ジュンは驚いた顔をして、ぼんやりと立ち尽くして、少しうつむいた後、嬉しそうに俺に向かって走リ出した。

俺、待てるよ。

もしも、こんな風に俺の元に戻って来てくれるなら…。

いつだって、送り出すことが出来る。

彼女の地球の果てへの旅にだって。

だけど、1年に一度、ご褒美を貰おう。

思いっきりジュンを独り占めできる、あの環礁への1週間の逃避行。

俺の腕の中に飛び込んできてくれるだろうか?

迷える思春期の少年みたいにドキドキしながら、スローモーションのように流れる時間の中で揺れるジュンの髪を見詰めていた。

ドンって衝撃の中で、俺が最初に感じた久しぶりのジュンの温もりは重ねられた唇にだった。

え?これってさ…期待していいんだよな?…やばい俺、顔が熱いかも。

ガキじゃあるまし…。

強がってはみても、 映画のワンシーンみたいなシュチエーションの中で、そんな彼女の温もりに包まれながら

俺は、満たされる想いにクラクラと眩暈さえしてきた。

嘘みたい…会いたかったと、小さく消えそうな声で呟くジュンの声が耳元に響く。

ブルー…BLUE…

彼女に贈る歌は俺が作った初めてのバラード。

その甘いメロディーに隠されたスパイスは、彼女が教えてくれたあのグラデーション。

【END】

トラギリ写真(別窓)

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ケロンパは基本8日+三食付で20万程度をいつも探します。
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