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あおいゼリー(ココア)2/2
あの時、哀しそうにヨウコは言った。
『行きたいわ、本当にそう思ったのよ。でも現実にあの島に暮らすなんて不安なのよ』
“こんな海と空しかない島で暮らせたらいいのにね”
あの旅行でそう語ったヨウコの言葉を真に受けて、帰国後、俺は日本人のダイビングインストラクターを募集している島にコンタクトを取ったのだ。
モルディブでは初めての日本資本のリゾートで、日本人のホテルのスタッフも探しているということだった。
『あたし、就職してまだ二年しか経ってないの。頑張って勉強して、それを生かせる仕事を始めたばかりなのよ』
ヨウコはアパレル会社でパタンナーの仕事をしていた。
あの時、俺は何をそんなに焦っていたのだろう。行かなくては、ただの旅行者としてではなく、もっともっと身近にあの島々を感じて生きていきたい。それもすぐにと。
ありきたりの大学を出て、ありきたりの会社に勤めていた。繰り返される代わり映ばえの無い日常に、飽き飽きしていたのだ。
だけど、そんな毎日が当たり前だと思っていた。こんなものなのだと。ヨウコのような恋人がいて、それで充分だと思った。惚れた女がいるというだけでも、そんな日常を幸せに色付けてくれていたから。
だけど知ってしまったのだ。あんな場所で過ごす特別な時間を。しかも、雇ってくれる島まであるなんて。
俺は有頂天だった。特別な人生を送れる気がしていた。しかも好きな女と一緒に。……だけど、俺が告白した計画に、ヨウコは哀しそうに首を横に振ったのだ。
『また、龍ちゃんと一緒に行きたい。絶対に行きたい。でも旅行じゃ駄目なの?』
裏切られた気分だった。だけど今思えば、ヨウコが躊躇して当たり前なのだ。自分の気持ちしか考えていなかった。そして勝手にヨウコだって、同じ気持ちなのだと信じ込んでいた。
ヨウコは重症ではなかったが、喘息の持病だって持っていたのだ。季節の変わり目に、辛そうに咳をする姿を、何度となく目にした事だってあったのに。医者すらいない異国の島に、暮らすなんて不安だっただろう。憧れのブランドのパタンナーになれた。そういう自分の仕事に夢だって抱いていただろう。
だけど、俺は蔑むような視線を向けると、彼女の元を去った。
『言ったじゃないか、暮らしてみたいって』
そんな風に彼女を責める俺は、ただの駄々をこねる子供だった。自分勝手な男だったのだ。
出発はあっという間に決まった。別れてからまだ二ヶ月も経っていなかった。出発する前日の夜、突然ヨウコの部屋を訪ねた。
『明日、日本を出る』
そう短く告げた俺を、青ざめた顔で彼女は見詰めた。悲しみの色を浮かべたその瞳の美しさに心がざわめいて、どうしてこんな事になってしまったのかと俺は途方に暮れた。
大事なものを失ってしまう後悔。
明日、再びあの環礁を訪れるのだというのに、ヨウコが一緒ではない事実が、それを色褪せたものに変えてしまっていた。
彼女は悪くなんてなかったのに。ただ、あの海を目の前にして、溜息のように溢した夢を口にしただけだったのに。俺は自分の逃げ道をそこに見つけて、ヨウコを道連れにしようとしただけなのだ。
だけど、わかっていても、この湧き上がるぶつけようの無い怒りを、ヨウコに擦り付けるように言った。
『嘘つき』
そして乱暴に彼女を床に押し倒し、服に手をかけた。
『やめて』
俺の腕の下で、ヨウコは泣いていた。
『こんなのって哀しすぎるよ』
哀しみでも傷跡でも何でも良かった。目の前から消えていく俺を、彼女の心にただ深く深く刻みつけたかった。
ヨウコが死んだ……。眠れなかった、一晩中。
難しい病名をすらりと言ったミウの声が、一晩中眠れないベッドの上で響いていた。まるでテレビドラマの可哀相な主人公が、お決まりにかかるような、そんな病。
キュウセイリンパセイハッケツビョウ。
「おじちゃん、おじちゃん」
薄く目を開くと、心配そうに俺を覗き込むミウの顔が目の前にあった。仕事の後、もうすぐ島を出発するであろうミウの姿を砂浜に探しに来たのに、ぼんやりと座り込んでいるうちに、うとうとと眠ってしまったようだ。こんな時間にうたた寝するなんて、昨夜の寝不足のせいだろうか。
上から覗き込んでくるミウの柔らかい髪が、俺の頬まで垂れていて、心地良い優しい感触に救われた気持ちになる。
ミウは遠慮がちにおずおずと指を伸ばすと、頬にそっと触れてきた。涙を拭うような仕草。いや、まさか俺、本当に?
自分の指で恐る恐る触れてみると、確かに濡れた感触があった。信じられない気持ちと、そんな自分を見られた羞恥心で俺はうろたえてしまった。
「おじちゃん、怖い夢でも見たんでしょう」
怖い夢……。いや、ヨウコの夢を見ていた。哀しそうに俺を見詰める、出発前夜のヨウコの夢を。
皆には内緒にしてあげるからねと、ミウは母親のような口調で言うと、慰める仕草で頭なんか撫でてくる。大人と子供の立場が逆転した状況に居心地が悪くて、何か話題はないかと俺は苦し紛れにこんな質問を投げかけた。
「ミウって可愛い名前だけど、どんな漢字を書くの?」
我ながらいい質問だ。漢字というのが大人らしい響きではないか。
「あのね、ちょっと難しいのよ」
ミウは砂を指でなぞって書き始めた。読めない漢字だったらどうしようと、少し不安を感じながら小さな指先を覗き込む。そして、穴ボコだらけになった砂のキャンバスの二文字に、俺はしばらく言葉を失ってしまった。
ミウは得意そうにこう説明を添えてくれる。
「美しい海って書くの。素敵でしょう?」
そう問いかけてくる彼女に、ただただ頷いてみせる。
『あたしいつか子供ができたら、海って文字を名前に入れるわ』
あの旅行の最後の日に、ヨウコは俺の肩に寄り添って独り言のようにそう呟くと、キラキラと光を弾く海を指さした。
子供。
そんな話は未来だと思ったが、夢を語り合っているみたいでくすぐったい感じがした。
ふたりの子供。
ちらりと想像してしまったその響きが、気恥ずかしくて甘ったるくて。
だけどそんな日がいつか来るのかもという予感は、俺達が深く愛し合っている証のようで……。俺は照れ隠しに黙って、ヨウコが指差した海をただ見詰めていた。
子供。こども。コドモ。
そのあまり慣れない単語に、触発されたようにあの日の会話を回想する。そうだ、彼女こう言ったのだ。
『結婚した姉は、婦人系の病気を患って子供が出来ないの。すごく母親が似合う人なのに。子育て手伝ってあげるから、何人でも産みなさいよなんて言われているの。心強いでしょう?』
まさか。そんな事って……。
不妊治療は日々進歩しているだろう。なかなか子供に恵まれなかった夫婦にある日突然、なんて話だって珍しい事ではない。だけど、まるでヨウコが少女になって佇んでいるようなミウの横顔に、俺は改めて心臓が高鳴るのを感じていた。
7歳、俺があいつと別れたの……。無意識に年月を逆算していることに気付いて、そんな自分に呆れた。何を考えているんだよ。
ミウがクスクスと笑いながら海を指差して、俺に語り掛けてくる。
「おいしそうだね」
その台詞に俺は、時間が後戻りを始めた錯覚に眩暈さえした。知っている……この台詞の続きを。
「だって、すご~く大きなあおいゼリーみたい」
あの日と変わらない空。
あの日と同じ海の色。
同じ眼差し。
同じ仕草。
「ほら、ぷるぷる揺れて綺麗だね」
ヨウコが死んだ。
昨日ミウからそう聞いた時は、何だか実感がわかなかった。ただ呆然と聞いていただけだったのに。
今、あの時と同じ台詞を耳にしたら、ぽっかりと空いた埋めようのない空虚感に俺は落ちていってしまった。
人生を変えた一週間。
初めてこの海に触れた衝撃。
楽園の風の心地良さ。
そして手を伸ばせば、いつもあいつの温もりがあった。
あれから、雇われのダイビングスタッフとしてこの環礁を巡り島々に暮らした。海亀やマンタと海を泳ぐ毎日。
生まれ育った東京と全く違う素朴な地が、俺の故郷にさえなった。この海のような青い瞳の恋人がいた事もあった。激しく燃えるような、行きずりの恋だって。だけどヨウコと過ごした、この海でのたった一週間。あれ以上の日々を俺は知らない。
俺を映した瞳。
胸を震わせるような吐息。
名前を呼ぶ声。
絡め合った熱い指先。
俺、あの時どんな顔をしていた? そんな温もりに包まれて、馬鹿みたいに満たされた幸福感ってやつ。夢の中にいるみたいだった。
ヨウコ、何処に行っちゃったんだよ? あの瞬間の俺の全て、みんなお前の胸にしまっておいたのに。もう会うこともなかったかもしれない。だけど……俺とあの一週間を共有していることで、繋がっているって信じていた。離れて違う人生を歩いていても、求め合う気持ちが擦り減っても。
なぁ、最後にやっぱりここに戻りたいと思ったんだろう? 俺にはわかる。あの時のヨウコの全てを知っているからさ。
ヨウコが死んだ。
だったら、あの日の俺も、ヨウコだけが知っているあの日の俺も、消えてしまったようで……。
大事な宝物を剥ぎ取られてしまった感覚。
目の前に広がる、あおいゼリーと例えられたその海が、果てしなく続く蒼い砂漠のように感じた。
「ごめんね、おじちゃん」
ミウがひどく申し訳なさそうに、慌てた様子で声を掛けてくる。
「そのお髭、熊みたいだって言ったの冗談よ」
そんな事を急に言い出したミウを、不思議な気持ちで見詰める。
「だから、ね? そんなに泣かないで」
気が付かなかった。再び瞼が熱かったのは涙のせいだったなんて。いや、声をあげてしまいそうな嗚咽を堪えるのに必死で、涙の事にまでに気が向かなかったのだ。
それ以上何も言わずにミウは、俺の頭を優しく抱いてくれた。
また、立場が……。
この期に及んでそんな負け惜しみがちらりと頭をかすめたが、癒すような温もりに今はただもたれかかって、子供のように泣きじゃくっていた。
「あ、そうだママがね、出発する前におじちゃんにお話があるんだって。お時間ありますかって聞いてきてって言われてたんだ」
思い出したように、ミウは言った。おいおい、最初に言ってくれよ、そんな大事なこと。だけど、そんな文句はとても今は言えそうにない。その話で少し気が紛れたのか、しゃくりあげていた息も落ち着いていた。
出発前ってあと一時間しかないじゃん。ママはどこにいるかと尋ねると、コーヒーショップだとミウは言った。
俺は波打際で顔を洗うと、少し緊張した気持ちでコーヒーショップに向かった。
ウッドデッキテラスの椅子にミウの母親は座っていた。遅くなった事を詫びると、ミウのおしゃべりに付き合わされていたのでしょうと、逆に申し訳なさそうに彼女は言った。なんて返事をしていいやら……困った俺は、曖昧な笑顔でその場を濁した。
「本当に、ヨウコが話していた通り、素敵な所だったわ」
彼女は溜息混じりにそう言うと、夕日を帯び始めた空を仰いだ。
「ヨウコの事は昔の事なのに、今更押しかけて、気持ちをかき乱すような事をしてごめんなさいね」
「いや、訪ねてくださった事、俺は感謝しています」
ありがとうと、小さな声で彼女は言った。
「昨日あの子、あなたにヨウコが亡くなった事、話したみたいね」
「……ええ」
「ヨウコが死んでこの二ケ月、ミウは一言も口をきかなかったの」
「えっ?」
驚いた。最初に会った時、ミウは普通に話し掛けてきたから。
「あなたに声を掛けたあの時、ミウの声を二ヶ月ぶりあたしは耳にしたの……。嬉しかった」
あぁ、だからあんなにびっくりした顔をして慌てていたのか。初めて顔を会わせた時の状況が頭をよぎった。
「お医者さんには、ヨウコの死を受け入れられないショックのせいだろうって」
全然気付かなかった。ミウはいつも笑っていたから。だけどあの小さな身体で、そんな傷を心に負っていたのかと思うと、胸の奥がズキズキと痛んだ。
「ヨウコはあの子にとって特別な存在だったの。年の離れた姉のような、親友のような、理想の憧れの女性……そして母親のような」
母親という言葉に、俺の心臓は跳ね上がった。少しの沈黙の後、思い詰めた声で彼女は言葉を繋げた。
「龍さん、あの子はね……ミウは……」
彼女の顔は青白く、その声は震えていた。俺はそんな風に彼女を怯えさせる何かを、言わせてはいけない気がして、その先を遮るように言った。
「金谷さん」
彼女はビクリとして、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。そして泣きそうな顔で俺を見上げて、次の言葉を静かに待った。
「ミウはいい子だ。あの子を見ていると、家族に愛されて育った子だってわかります。あなたの話も、お父さんの話も、僕は家族の話を沢山ミウから聞きました」
彼女は瞳を潤ませて、何かに耐えるように押し黙っている。俺はおどけるように言った。彼女の気持ちを少しでも楽にしてあげたくて。
「ミウには俺がいいショック療法だったんでしょうね。憧れのヨウコの元彼が、熊みたいなオヤジになっていた」
彼女は両手で顔を覆った。肩が震えていて、泣かれてしまったと慌てたが、漏れてくるその声はクスクスと押し殺した小さな笑い声だった。
「……ごめんなさい」
申し訳なさそうにそうは言うが、込み上げてくる笑いを押さえ切れない感じだ。場の雰囲気が明るくなって、救われた気持ちになる。だけどあまりのウケように、繊細な俺はちょっとばかり傷付いてはいたけれど……。
「ヨウコがあなたに惹かれたの、わかる気がするわ」
さらりとそんな台詞を口にして、彼女は膝に置いてあった本を俺に差し出した。 不思議な気持ちでそれを受け取る。
「これはやっぱり龍さんにお返ししますね」
本だと思ったそれはアルバムだった。ぱらりと表紙をめくると、抜けるような青空の下で、馬鹿みたいにはしゃいでいる俺の写真が張り付いている。
若くて、髭面でもない、あの時の俺。隣の写真にヨウコもいた。日に焼けて、ヤシの木陰で頬杖をついて、こちらを覗き込んでいる。あの旅の写真、ヨウコが持っていたのか。
「ヨウコ、このアルバムを病室にまで持ち込んでいてね、まるで物語を読むみたいにページをめくっては、よくミウに話していたわ」
遠くでミウが「ママ」と呼ぶ声が聞こえる。彼女は「今行くわ」と声がした方向に返事をした。そしてゆっくりと立ち上がると、話を締めくくるように語った。
「ヨウコはこう言っていたの。これがあおいゼリーに浮かぶ小さな島よって」
桟橋の先端で俺は、積み込まれるミウ達のスーツケースを眺めていた。何度となく見慣れた光景。だけど自分だけがポツリと置いて行かれる気分だった。
俺のシャツの裾をミウは引っ張って、桟橋の端っこに連れていく。そして、そこにしゃがみ込むと、名残惜しむように桟橋の灯りに集まった魚を見詰めた。
「あのね、そのアルバムの最後の一枚、綺麗だったからあたし貰っちゃったの」
「いいよ、ミウに持っていて欲しいな。どんな写真だった?」
「えっとぉ~」
バツが悪そうにミウは言葉を濁した。
ミウ以外のゲストは、皆、船に乗り込んだみたいだ。スタッフが、癖のある英語で声を掛けてくる。しゃがんでいたミウは立ち上がり、俺の耳元で小さく囁いた。
「こんな感じの写真よ」
チュッと小さな音。おでこに甘いキスを落とされる。 悪戯っぽく俺を覗きこむと「またね」とミウは脇をすり抜けて船に乗り込んだ。
おいおい、その手慣れたさりげないキス……まいったな。 苦笑いをしながら、俺も立ち上がると船の方へ向かった。
突き抜けるエンジン音を響かせて、スピードボートが桟橋をゆっくりと離れていくのが見える。
「バイバイ」
そう叫びながら、暗くなった海に溶け込んでいくミウの姿。 水平線に近づいていく船の灯りはどんどん小さくなって、空を埋め尽くす星の光に混じっていった。
手にしていたアルバムをパラパラとめくる。桟橋の柔らかいライトに照らされて、あの日々の断片が浮かび上がる。ヨウコが見詰めたあの瞬間、俺が見詰めたあの瞬間がそこにあった。無くしてしまったものを、再び抱き締めた安堵感。
そしてミウが言った通り、最後のページの一枚が抜き取られた形跡があった。いや、差し替えられたと言うべきだろう。他のとは大きさの違う一枚の写真。そこにはミウとヨウコが写っていた。どこかの公園で撮ったのだろうか、背景は一面の芝生だった。仲よく寄り添って、楽しそうにカメラを見ている。
もしかしたらミウは、ヨウコが産んだのかもしれない。万に一つの可能性で俺の子供なのかもしれない。だけど、ヨウコは俺に何も言わなかった。そしてそのまま消えてしまった。それが全てなのだと思った。
そしてミウはここを訪れた。ヨウコに導かれて……。俺の傍で一週間過ごし、家族と暮らす家に帰って行ったのだ。
傷付いた心を、この島は優しく癒してくれただろう。ヨウコが教えたあおいゼリーの海は、ミウの瞳に深く焼きついただろう。
絶えることなく、世界中から人々がこの地を訪れる。そして様々な賞賛の言葉を口にする。誰の物でもない美しい環礁。
けれども、ミウのような子供達にこそ、この海を知ってもらいたいと思った。
無垢な瞳にこの海は、ただありのままに映るだろう。そして地球が青く輝く意味をその小さな胸に刻むのだ。
背後からヌッと太い腕が伸びてきて、ごっつい指が俺の写真を指差した。振り向くと、顔馴染みのレストランの若いウェイターが、アルバムを覗いている。
「……リュウ?」
まさかな、という口調で彼はそう尋ねてきた。
「イエス」
当たり前だというように俺は答える。
信じられないとそいつは、大げさに頭を抱える仕草をしやがった。まだ幼さを残した悪戯っぽい顔で、しつこく俺を冷やかしてくる。生意気なガキだ。
得意の回し蹴りを食らわしてやると、今度はそのカンフーを教えてくれとまとわりついてくる。いつまでもさぼっていると、大目玉を食うぞと脅かすと、慌てた様子で戻って行った。
その後ろ姿を見詰めながら、シャワーの後、久々に……いや、数年ぶりに髭でも剃ってみるかと思ってみる。
朝食のいつもの席に座る俺に、お決まりの紅茶を運ぶアイツは、見知らぬ男をそこに見るだろう。
そんな思いつきに心を躍らせて、ミウに熊と言われたこの髭を、名残惜しむように触れていた。
【END】
ココア写真(別窓)
【目次】
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